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腰原きもの工房が花小金井南町を経て、現在の青梅へ友禅工房を移転するまでのお話です。
花小金井南町での友禅工房は平屋の一軒家でした。
父(淳策)はこの物件を見つけるためには、かなりの苦労をしたそうです。
友禅染めには着物一反を張れるだけの広い敷地が必要なのですが、
駆け出し時代の父に友禅工房を兼ね備えた住居として貸してもらえる物件は多くなかった様です。
父は親切な友人の紹介を得て、花小金井南町にある庭付き一軒家をようやっと貸りる事が出来たそうです。
とはいえ、この物件も元は普通の住宅ため、当然ながら染め場はありません。
前章でも述べました通り、この年に私が生まれてしまった事と、友禅工房移転が重なった事もあり、
資金的に乏しかった父は自分で染め場を建てました。
湿度、温度によって染め上がりが左右される友禅染めにおいて、
花小金井南町時代の染め場は完全な環境とは言えず、
天候が悪い時などには真夜中であっても常に乾きの状態を見ていなくてはならないという苦労がありました。
家の中では図案制作、糊置き、彩色などをする仕事場と居住スペースが一応、区別されておりましたが、
私が子供時代を過ごした、この花小金井南町の家では生活と友禅が常に一緒にありました。
両親の作品を着物雑誌、「美しいキモノ」へ掲載していただくようになったのも花小金井南町に移転してからです。
「美しいキモノ」に作品が掲載される様になると、両親の仕事も少しづつ軌道に乗り始め、
しばらくすると、お弟子さんも二人抱えながら友禅工房を運営するようになりました。
展示会も毎年二回、銀座の日産ギャラリーと花小金井南町の友禅工房で行うようになりました。
展示会になると両親の制作した沢山の友禅作品が所狭しと飾られ、それを観にやって来るお客さん達の反応に
子供ながらにとても嬉しい気持ちになったものです。
自宅兼友禅工房で行われる展示会は、建物こそ、昭和によく見られた木造建築の古い一般家屋でしたが
居住スペースになっている部屋も仕事場も全てが片付けられ、毛氈、衣桁で整えられ、手作りの展示会でした。
この花小金井の友禅工房での手作りの展示会は、現在の青梅アトリエに移った後も変わらず続けられている伝統です。
花小金井南町での友禅工房活動は約15年間ほど行いました。
その後、両親は平成6年に自分達の土地で、さらに広く、使いやすい友禅工房で仕事をする為に、現在の所在地である
青梅市柚木町に友禅工房を新築移転しました。
私が中学校を卒業し、青梅に移ってきてから高校、大学を卒業するまでの間に母・幸子が亡くなり、
友禅工房が悲しい気持ちに包まれた時期もありましたが、
私も大学卒業と同時に腰原きもの工房で手描き友禅の仕事を本格的に始め、平成20年には信子と結婚しました。
その後、父も現妻・和美と再婚をしたりと家族が増え、現在では家族みんなで力を合わせて活動しています。
両親達が今までそうして来たように、私達も多くのお客様に喜んでいただける着物を作りたいと思っています。
祖父や両親の志を受け継いで、この腰原きもの工房歴史話が五章、六章と続いていけるように、これからも努力して参りたいと思います。
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